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用意した紙が特殊だったので、何度も失敗して数が少なくなったという…。
レイン×アンジェリーク
「ねえ、レイン。この花瓶はどこに置こうかしら」
 引っ越し先の新居。
 ファリアンの郊外に位置する高級住宅街の一角に、2人の新しい住まいはあった。
 慣れない室内に心躍らせながら、アンジェリークは梱包材に包まれた真新しい陶磁器の花瓶を取り出した。
 先日ファリアンの繁華街で、一目惚れして購入したものだ。
 レインは箱から食器を取り出す手を止め、アンジェリークの方に向き直る。
 少し考えてから答えを口にした。
「ああ、窓辺はどうだ? リビングのテーブルの上でも良いな」
「そうね。じゃあ、テーブルの上に置きましょう」
 アンジェリークは、これまた最近レインと一緒に選んで買い求めた、新品の木製テーブルの上に、真っ白い花瓶を置く。
 二人の食卓を彩る花々ももうすでに購入済みだ。
 何度か花瓶の角度を変えて、気にいるように置いた彼女は、ほうと深い息を吐き出した。
「何だか夢みたい。でも、とても幸せ。これからずっと、レインと一緒に暮らせるのだから」
 満面の笑みのアンジェリーク。
 レインも一緒に笑顔になる。
「ああ。オレもだよ。オレもお前と暮らすこれからを思うと、幸せでたまらない」
 レインはアンジェリークの肩を抱いた。
 完全に引っ越しの片付けの手は止めてしまっている。
 しかし、そんなこと2人には関係なかった。
「ずっと、そばにいてくれ。何があっても、オレはお前のそばにいたい」
「レイン・・・嬉しい!」
 ギュッとお互い抱きしめ合う二人。
 すれ違って以来、お互いの想いは伝えあうことを約束したのだ。
 その結果、二人の間に隠された思いはない。
 完全に二人の世界――――。
「おやおや。この調子では、いつまでたっても引っ越しは終わりませんね」
 手伝いに来ていたニクスが苦笑しても。
「良いじゃないか。幸せそうな笑顔だよ、2人とも」
 重い家具をひょいひょい動かしているジェイドが、マイペースな笑顔を浮かべていても。
「平和である証拠だ」
 はたきを持って隅々まで家を磨き上げているヒュウガが嘆息しても。
 2人の世界を築き上げている2人には、本当に関係なかった。
 陽だまり邸の3人が引っ越し作業を終えてしまうのと、2人が現実の世界に戻ってくるのとどちらが先かと競えば、きっといい勝負になるはずだ。
 
「ねえ、レイン。テーブルクロスはこれとそれ、どちらが良いかしら?」
「そうだな。お前の選んだもので良いよ」
「分かったわ。じゃあ、レインにあいそうなこの、レースのものにするわ」
「ははっ、何だそれは。お前の方が似合うだろう」
「じゃあ、私とレインはお似合いなんだわ」
「アンジェ・・・」
 実に甘い空気に酔いそうになりながらも、この幸せいっぱいの夫婦を、元同居人の3人は温かく――多少生ぬるいときもあるが――見守り続けていた。
 
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