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私の中の、静のイメージカラーが水色なのも、きっと氷帝から入ったせいなんだろうなあと思います。
跡部×静
それは、教室で今日の出来事を日誌にまとめていたところだった。
だいたいが部活動か家に帰っているので、教室には私しかいなかった教室の入り口に大柄な人が立っていた。
「? あれ、樺地くん。どうしたの?」
あまり一人で動きまわっているところは見たことない。
と言うより、景吾先輩の近く以外を歩き回っていることが珍しい。
私はちょうど書きあがった日誌をぱたんと閉じて、ドアの近くへ歩いていって、樺地くんを見上げる。
普段滅多に言葉を発することのない彼だが、はっきりと答えを返してくれた。
「跡部さんが、起きません・・・」
「え?」
「みんな、困ってます」
どういうこと?
それだけ言うと、樺地くんはどんどん歩いていってしまう。
訳は分からないけれど、わざわざ樺地くんが呼びに来るくらいだから、ついていった方が良いのだろう。
私は黙って樺地くんの後を追った。
樺地くんはまっすぐ、部室に向かう。
それにしても、起きないなんて。
それくらい寝入っているのかな。
まあ、元々多忙な人だから、疲れていないなんてことはないんだろうけど。
樺地くんは、普段テニス部員以外の出入りが固く禁じられている部室のドアに手を掛けて、
「どうぞ」
そう、ドアを開けた。
私は促されて、その中に入った。
綺麗に整理整頓された部室の中で、ひときわ大きな椅子の上に、件の人は座っていた。
「景吾先輩」
机に肩肘をつき、目を閉じている。
名前を呼ばれても気がつかない。
「景吾先輩?」
少しためらってから、私は景吾先輩の肩に触れた。
「起きて下さい。部活の時間ですよ」
「・・・・・・」
「景吾先輩、皆さん待っているそうですよ」
反応はない。
本当に寝ているだけ?
あまりにも反応がなさ過ぎて、怖くなってきた。
もしかして、どこか具合が悪いんじゃ・・・。
私は景吾先輩の口元に耳を近づけてみた。
大丈夫。息はしてみているみたい・・・。
「フッ」
「きゃああっ!」
ほっとしたのも束の間、いきなり耳に息を吹きかけられて素っ頓狂な声をあげてしまった。
「な、ななな・・・!?」
耳を押さえて飛び退く私に、景吾先輩は少しだけ笑みを浮かべたが、目は開いていない。
「ほ、本当は起きているんでしょう!」
そうとしか思えない。
こんなタイミングない。
だというのに、知らんぷりで堂々と目を閉じていられるのは、景吾先輩の成せる業だろう。
「起きて下さい! 皆さんもお待ちかねですから」
嘘はばれているのに、全く気にした風はない。
起きないつもりだ。
「ど、どういうつもり・・・きゃっ!」
真意を問いただそうとした瞬間。
それを遮って手首を掴まれた。
そのまま引き寄せられて、どさりと景吾先輩の胸の中に納まる。
「起こしに来るのが遅えんだよ」
「遅くないですよ・・・! 急いで来たんですから」
間近に感じるぬくもりが、思考力を奪う。
こういうことには慣れていないので、どうして良いか分からずに、大人しくしているしかない。
そんな私を、景吾先輩はふっと笑い飛ばした。
「お前、明日からちゃんと起こしに来い。じゃなけりゃまた、樺地を呼びに行かせる」
いきなりとんでもないことを言い出すのは知っていたし、慣れてきたつもりだったけれど、まだまだみたいだ。
「えっ、あ、あの・・・」
言葉がない私に、景吾先輩はそっと囁きかける。
「毎日会いてえってことだ。大人しく会いに来い」
「!?」
その声があまりにも甘く響いたので、心臓が口から飛び出すかと思った。
それくらい跳ね上がった鼓動は、景吾先輩にばれているだろう。
「約束しねえと離さねえぞ?」
「・・・約束しても、離してくれなさそうな気がするのは、気のせいでしょうか・・・?」
あっ、笑った!?
図星だったのだろう。
でも、悪びれた様子は一切ない。
「・・・樺地くんや、他の人を巻き込むのは、やめて下さいね?」
「ああ。あいつらに邪魔されるのも、癪だからな」
邪魔されているのは、皆さんのような気もするんだけど・・・。
じっと景吾先輩が私の答えを待っている。
あまりに真摯な目が、私を捕らえて離さない。
体だけじゃなくて、心もきっと捕まってしまったのだ。
「約束、します」
うつむき加減にそうお返事すると。
「上出来だ」
不敵な笑みを浮かべた景吾先輩は、堂々自分の言ったことを破って、私をぎゅっと抱きしめた。
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